AIで作った営業メールは、「それっぽいのに、そのまま送れない」。
編集部が架空の商談メモで試したところ、「9月17日14時の候補」は確定した予定に変わり、「今のExcelは残したい」という要望は、すでに決まった方針のように書かれました。
どちらも文章として自然なので、送信前に見落としやすい誤りです。
ChatGPTに「商談後のお礼メールを書いて」とだけ頼むと、敬語は整っても、商談の事実までは守られません。
足りない情報を推測し、無難な営業文でつなぐことがあるからです。
そこで、AIへ渡す材料を「現在の状況」「相手の要望」「こちらの約束」「次の連絡」の4行に絞ります。
この記事では、商談後・新規営業・資料送付後の例文とプロンプトに加え、編集部が試した入力と出力もそのまま紹介します。
営業メールを作る前に、
4行のメモを用意する
現在の状況、要望、約束、次の連絡を分けてAIへ渡します。
たとえば、営業状況を集約する仕組みについて商談した場合は、次の4行です。
- 現在の状況:5人分の営業状況をExcelから毎週集めている
- 相手の要望:担当者の入力作業は増やしたくない
- こちらの約束:現在のExcelを変えずに集約する案を、明日までに1枚で送る
- 次の連絡:資料を見て、分からない点だけ返信してもらう
実際の顧客情報を入力する前に、社内規程と利用サービスの利用規約・プライバシーポリシー・設定を確認してください。初めて試す場合は、会社名、氏名、商談内容、数値を架空の情報へ置き換えます。
入力できる情報を確認したら、この4行を次のプロンプトへ入れます。
あなたは法人営業の担当者です。
次の情報だけを使って、営業メールの件名と本文を1通作ってください。
【メールの場面】
[初めて連絡する/商談済み/資料送付済み]
【確認できた事実】
1. 接点または現在の状況:[商談で分かった状況、相手が公表した情報、資料送付日]
2. 相手の要望または質問:[本人が話した内容または公表情報。なければ「なし」]
3. こちらが伝える内容:[回答、送る資料、約束したこと]
4. 次に相手へお願いすること:[資料送付の許可、質問への返信、候補日の選択など一つ]
【条件】
・入力にない実績、価格、効果、日程、相手の課題を作らない
・長い会社紹介や大げさな感想を書かない
・分からない項目は推測せず、文章を書く前に質問する
【出力】
件名
本文
送信前に元のメモと照らし合わせる箇所
プロンプトはどこを直せばいい?
直すのは、丁寧さの注文ではなく、事実の渡し方です。次の頼み方が、うまくいかない典型です。
青葉産業の山田様に、今日の商談のお礼メールを書いてください。
丁寧で、失礼のない文章でお願いします。
上の頼み方には、商談で確認した事実がひとつも入っていません。
生成AIは敬語を整えられますが、書かれていない事実は推測で埋めます。
同じ依頼でも、4行のメモを先ほどのプロンプトへ入れると次の形になります。
あなたは法人営業の担当者です。
次の情報だけを使って、営業メールの件名と本文を1通作ってください。
【メールの場面】
商談済み
【確認できた事実】
1. 接点または現在の状況:5人分の営業状況をExcelから毎週集めている
2. 相手の要望または質問:担当者の入力作業は増やしたくない
3. こちらが伝える内容:現在のExcelを変えずに集約する案を、明日までに1枚で送る
4. 次に相手へお願いすること:資料を見て、分からない点だけ返信してもらう
【条件】
・入力にない実績、価格、効果、日程、相手の課題を作らない
・長い会社紹介や大げさな感想を書かない
・分からない項目は推測せず、文章を書く前に質問する
【出力】
件名
本文
送信前に元のメモと照らし合わせる箇所
改善前との違いは3つあります。
場面を指定したこと、確認できた事実だけを渡したこと、相手へのお願いを一つに絞ったことです。
この例では、場面と事実を整理して渡しています。
ただし、次の試験で示すように、それでも候補を確定扱いする誤りは起きます。
4行にすれば修正が不要になるわけではありません。
編集部の試験では、
候補日時が確定扱いになった
候補を確定へ、要望を約束へ変えていないか照合します。架空の説明例です。
4行のメモは、文章を丁寧にするためだけのものではありません。
編集部が架空の商談メモを使って文章を生成したところ、短い指示では「9月17日14時」という候補が確定日時に変わりました。
| 入力・出力 | 記載内容 | 確認結果 |
| 架空の商談メモ(抜粋) | 次回候補は9月17日14時。現在の表は残したい。 | 候補日時と要望であり、まだ合意ではない |
| 短い指示の出力 | 「9月17日14時のお打ち合わせについて」 | 候補を確定扱いにしている |
| 条件を追加した出力 | 「次回日時は9月17日14時が候補です」 | 候補であることを保てた |
条件を加えた出力でも、「現在の表は残したい」という要望が「現在の共有表は残します」という合意に変わりました。
プロンプトへ推測禁止と書くだけでは足りません。
送信する人が、元の4行と出力を見比べる必要があります。
試験条件と生成記録を見る
- 実施日:2026年9月13日
- 使用データ:すべて架空。
実在する会社・人物・顧客情報は不使用
- 試験範囲:Codexの会話モデルによる文章生成。モデルの名称・版は確認できず、ChatGPT製品、API、メール送信機能は試していない
- 評価対象:返信率や商談化率ではなく、入力にない事実が加わったか
架空の入力データ、短い指示の出力、条件追加後の出力、実行時の依頼文を公開しています。
同じ商談メモからお礼メールを作る場合は、次のように事実と約束だけを残します。
件名:本日のお礼と、営業状況の集約方法について
[相手の会社名]
[担当者名]様
お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
本日はありがとうございました。
担当者の入力作業は増やさず、現在のExcelを使ったまま営業状況を集約する案をまとめます。
明日までに、全体の流れが分かる1枚の資料をお送りします。
資料をご覧になって分からない点がありましたら、お知らせください。
引き続きよろしくお願いいたします。
[自社名・氏名・連絡先]
送信前には、AIが「明日まで」を「近日中」に変えていないか、商談メモと見比べます。
新規営業では、
連絡した理由を伝える
新規営業で「サイトを拝見しました」とだけ書いても、なぜ自分に届いたのかは伝わりません。
相手が公表した取り組みに、自社の資料やサービスがどう関係するかまでAIへ渡します。
新規営業メールは、相手の情報が公開されているだけで送れるとは限りません。以下は、送信先が事業用メールアドレスを公開し、その公開箇所に広告宣伝メールを拒否する表示がないことを確認した想定です。実際の送信可否は、自社の法務担当者などへ確認してください。
ここでは、架空の会社が公表した「営業拠点の開設」を接点に、4つの材料を用意します。
- 接点:営業拠点を新設したという発表
- 相手の公表情報:新しい拠点で営業担当者を募集している
- こちらが伝える内容:拠点ごとの案件状況を集める方法をまとめた資料を送れる
- 次にお願いすること:資料を送ってよいか聞く
次の完成文は書き方を示すためのものです。会社名、氏名、発表内容、メールアドレスはすべて架空で、コピー用のひな型ではありません。
件名:営業拠点ごとの案件管理に関する資料のご案内
株式会社青葉産業
営業企画部 山田様
突然のご連絡失礼いたします。株式会社みなと企画の佐藤と申します。
貴社の「大阪営業所開設のお知らせ」を拝見しました。
大阪営業所の立ち上げにあたり、既存拠点と同じ基準で案件状況を管理する際に使えるチェックリストをご用意しています。お送りしてもよろしいでしょうか?
配信停止をご希望の場合:unsubscribe@example.jp
株式会社みなと企画
佐藤一郎
sales@example.jp
相手が「人手不足で困っている」「現在の管理方法を変えたい」と公表していなければ、こちらの想像で書き足しません。
製造業の例:展示会の
告知を接点にする
営業拠点の開設が接点になるなら、展示会の出展告知も同じ書き方で接点にできます。
用意する材料は変わらず4つです。
- 接点:金属加工の展示会に出展するという告知
- 相手の公表情報:出展の告知と会期
- こちらが伝える内容:展示会後の問い合わせを記録して担当へ割り振る手順のチェックリストを送れる
- 次にお願いすること:資料を送ってよいか聞く
次の完成文も書き方を示すための架空例です。会社名、氏名、展示会名、メールアドレスは実在の企業・催事と関係ありません。
件名:展示会後のお問い合わせ記録に関する資料のご案内
東雲金属工業株式会社
営業部 高橋様
突然のご連絡失礼いたします。株式会社みなと企画の佐藤と申します。
貴社の「メタルテック展 出展のお知らせ」を拝見しました。
展示会の会期後に、お問い合わせを記録して担当者へ割り振る手順をまとめたチェックリストをご用意しています。お送りしてもよろしいでしょうか?
配信停止をご希望の場合:unsubscribe@example.jp
株式会社みなと企画
佐藤一郎
sales@example.jp
書いていないことにも理由があります。
「展示会後のフォローにお困りではありませんか」と書かないのは、困っているかどうかを相手が公表していないからです。
公表された告知と、送れる資料の関係だけで文面を組み立てます。
資料送付後は、
質問への回答を先に書く
資料のページ番号だけを案内すると、相手にもう一度探させることになります。
質問への回答を本文へ書き、詳しい説明があるページをその後に示します。
以下は、「現在のExcelを使い続けられるか」と質問された場合の架空例です。
以下も書き方を示すための架空例です。会社名、氏名、質問、回答、ページ番号は実在の案件と関係ありません。
件名:既存Excelの利用について
株式会社青葉産業
営業企画部 山田様
お世話になっております。株式会社みなと企画の佐藤です。
先日は資料をご覧いただき、ありがとうございました。
現在のExcelをすぐに置き換える前提ではありません。
まず項目名と入力方法を確認し、そのまま使える部分を整理します。
確認する項目は、お送りした資料の4ページに記載しています。
確認用に、個人情報や取引条件を含めず、項目名だけを記載した見本をご用意いただけますでしょうか?
株式会社みなと企画
佐藤一郎
sales@example.jp
回答が社内で確定していない場合は、AIに推測させません。
「社内で確認し、9月18日までに回答します」のように、確認できた期限だけを書きます。
期限が決まっていなければ、メールを作る前に社内の担当者へ確認します。
資料を送って返信が
ないときは、どうする?
催促を重ねるのではなく、相手が短く返信できる形を作ります。
送った資料の読みどころを一つだけ添えて、読む負担と返す負担の両方を下げます。
材料は同じ4行です。
- 現在の状況:9月18日に「営業状況の集約手順」の資料を送り、まだ返信がない
- 相手の要望:なし(返信がないため)
- こちらが伝える内容:全体の流れは資料3ページの図で分かる
- 次の連絡:不要なら返信をお願いする
以下も架空例です。会社名、氏名、日付、ページ番号は実在の案件と関係ありません。
件名:先日お送りした資料について
株式会社青葉産業
営業企画部 山田様
お世話になっております。株式会社みなと企画の佐藤です。
9月18日にお送りした「営業状況の集約手順」の資料はご覧いただけましたでしょうか。
お忙しい場合は、3ページの図だけご覧ください。全体の流れは、その1枚で分かるようにまとめています。
ご不要でしたら、その旨ご返信いただければ、以後のご連絡は控えます。
株式会社みなと企画
佐藤一郎
sales@example.jp
フォローで増えやすい誤りは、送っていない資料への言及と、届いていた返信の見落としです。
生成した文面の資料名と日付が送信記録と合っているか、相手からすでに返信や断りが届いていないかを確かめてから送ります。
うまく書けないときは、
症状から直し方を探す
生成した文面が使えないとき、原因の多くは指示の側にあります。
よくある症状と直し方を表にまとめたので、当てはまる行から読んでください。
| 症状 | 原因 | 直し方 |
| 誰に送っても同じ文面になる | 場面と相手の情報を渡さず、「営業メールを書いて」とだけ頼んでいる | 状況・要望・約束・次の連絡の4行を書いてから生成する |
| 入力していない実績や効果が書かれる | 材料が足りない部分を、AIが一般的な営業文で埋めている | 「入力にない実績・価格・効果を作らない」と条件に書き、送信前に元のメモと見比べる |
| 候補日が確定した日程になっている | 「候補」という条件が入力に書かれていない | メモに「候補」と明記し、出力の日時まわりの表現を毎回確認する |
| 会社紹介が長く、用件が埋もれる | 出力の条件がなく、定型の紹介文で行数が増えている | 「長い会社紹介を書かない」「お願いは一つ」と条件に書く |
| 相手の質問に答えていない | 質問文そのものを材料として渡していない | 「相手の要望または質問」の行に、質問文をそのまま貼る |
表の直し方はどれも、言い回しの工夫ではなく渡す材料の追加です。
出力を何度も書き直させるより、元の4行を整えるほうが早く終わります。
商談ごとのメールを、
送信した版まで残す
営業チームで使うなら、メールの入力メモを商談番号と結び付けます。
AIへ渡すのは、顧客の要望、確認済みの対応範囲、次に確認したいことです。
候補日や顧客の要望を、確定した約束に変えないようにします。
担当者は、日時、対応範囲、相手に依頼することを元の商談メモと照合します。
承認後に宛先や文面が変わった場合は、もう一度確認してから送信します。
送信した文面、日時、商談番号を残すと、別の担当者も何を伝えたかを確認できます。
返信後の追客停止や送信予約までつなぐ設計は、営業メールの自動化で扱います。
本文の試験は文面の生成であり、この連携を実行した結果ではありません。
送信前に確認する5項目
元の記録を開き、宛名から送信状況まで確かめます。
- 宛名:会社名、部署名、氏名、敬称が合っているか。
- 会話:別の商談相手の話が混ざっていないか。
- 約束:候補日を確定扱いにしていないか。提供できない機能や効果を書いていないか。
- 添付:ファイルを付けたか。本文の資料名やページ番号と合っているか。
- 送信状況:すでに返信、断り、配信停止の連絡を受けていないか。
同じ5項目を、貼り付けて使える形でも置いておきます。
送信前にメール画面の横で開くか、社内チャットの下書きに貼って使ってください。
【営業メール送信前チェック】
□ 宛名:会社名・部署名・氏名・敬称が商談メモと一致している
□ 会話:別の商談相手の話が混ざっていない
□ 約束:候補日を確定扱いにしていない。提供できない機能や効果を書いていない
□ 添付:ファイルを付けた。本文の資料名・ページ番号と合っている
□ 送信状況:返信、断り、配信停止の連絡を受けていない
顧客情報を生成AIへ
入力しても大丈夫?
顧客名や商談メモを外部のAIへ入力できるかは、社内規程と利用サービスの契約・設定によります。
個人情報保護委員会は、入力が利用目的の範囲内か、個人データが機械学習に使われないかなどを確かめるよう注意を呼びかけています。
初めて試すときは、会社名と氏名だけでなく、商談内容や数値も架空の情報へ置き換えてください。
新規営業メールの
送信条件を確認する
面識のない相手へ広告宣伝メールを送る場合は、消費者庁の特定電子メール法の案内も確認してください。
広告宣伝メールは事前の同意が原則です。
取引関係、名刺交換、公開されたメールアドレスなどには、条件付きの例外があります。
受信拒否の案内を表示し、拒否された後は送信を止める必要があります。
個別の送信可否に迷う場合は、自社の法務担当者などへ相談してください。
受信メールへの返信を効率化したい場合は、AIによるメール返信の解説もご覧ください。
回答案を作る方法と、送信を止める条件を紹介しています。
資料送付後の連絡を続ける場合は、営業メールのAI自動化と、送信・追客をつなぐ設計例をご覧ください。
商談で決まった作業を先に整理する場合は、商談議事録のテンプレートと記入例を確認できます。