自動車整備のAI活用は、整備士が書いた点検メモを、お客様に渡す車検見積の説明文や追加整備の連絡文に直す作業から始めると、効果と注意点を確かめやすくなります。
AIに任せるのは「整備士のメモを、お客様に伝わる言葉に直すこと」までです。故障の判断、保安基準に合うかどうか、部品代と工賃は、これまでどおり整備士とフロント担当が決めます。
この記事は、地域の整備工場や車検店で、フロントの仕事を社長や少人数のスタッフ、ときには整備士自身が兼ねている方に向けて書いています。
受付から引き渡しまでの工程のうちAIに向く作業を整理し、見積の説明文を作る指示文、追加整備の承諾を取る連絡文の指示文、部品商への発注文の指示文、車検の案内文と予約への返信の指示文を、そのまま試せる形で載せます。あわせて、いま使っている整備管理ソフトとAIの役割をどう分けるかも説明します。
スキャンツールのAI機能のような故障診断を助ける道具や、整備の項目を提案する専用のシステムもありますが、それらは診断の道具の話です。この記事は、汎用の生成AIで事務の文章を下書きする使い方に絞ります。
本文の点検メモ・連絡文・出力の見本は、説明のために作った架空の設計例で、特定の整備工場の記録ではありません。載せた指示文は、2026年10月15日に汎用の生成AI(OpenAIのgpt-6-sol)へ架空の材料を入れて試し、出力がずれた点を指示文と注意書きに反映しています。
この記事で分かること
- 区分のないメモを渡すと、AIが重要度を自分で決めてしまいます
- 点検メモや見積をAIに貼る前に、入れてよい情報と入れない情報を工場で決めます
- 台帳・見積・請求・記録簿は整備管理ソフトに残し、AIにはお客様や部品商に送る文章の下書きだけを任せます
整備工場の事務を工程に分け、
AIに向く作業を見つける
まず、車が入庫してから引き渡すまでの事務を工程ごとに並べ、文章を書く作業と判断する作業を分けます。
受付から引き渡しまでの5つの工程
整備工場の事務は、入庫予約、見積の説明、追加整備の連絡、部品の発注、引き渡しの説明に分けられます。どの工程にも、整備士が見たことを、お客様や部品商に伝わる文章に直す作業が含まれています。
汎用の生成AIが手伝えるのは、その「伝わる文章に直す」部分です。点検の結果は整備士が車を見て決めるもので、文章を下書きするAIに作らせるものではありません。
| 工程 | AIに任せる作業 | 人が決めること |
| 入庫予約・受付 | 予約への返信文、来店前の案内文の下書き | 入庫の日時、代車の有無、作業枠の割り当て |
| 見積の説明 | 整備士のメモをお客様向けの説明文に直す | 整備が必要かどうか、必須・推奨・様子見の区分、金額 |
| 追加整備の連絡 | 承諾を取る連絡文と、電話で話す要点の下書き | 作業するかどうか(お客様が決める)、承諾の記録 |
| 部品の発注 | 発注メモを部品商への依頼文に整える | 品番と適合の確認、発注先、数量 |
| 引き渡しの説明 | 行った作業と次回の点検で見る箇所の説明文 | 実際に行った作業の確認、記録簿への記載 |
「人が決めること」の列は、AIを使い始めても人の仕事として残ります。人が決めることまでAIに渡すと、お客様への説明と実際の整備が食い違う原因になります。
整備士が事務を肩代わりする例は、
国のガイドラインにも載っている
国土交通省の自動車整備業における生産性向上のためのガイドライン(令和3年3月)は、従業員6名の指定工場の事例を紹介しています。専属の事務員を1名置いていても、事務処理が煩雑で時間がかかるため整備士が代わりに行う状況が生じ、整備時間が長くなっていたという内容です。
この事例で導入されたのは、車検などの手続きをオンラインでまとめて行うサービス(OSS)に対応したソフトで、AIではありません。それでも、事務が回らないと整備士の手が止まるという構図は、少人数で回している整備工場に共通します。説明文や連絡文をAIで下書きできれば、整備士が書く文章を数行のメモに抑えられます。
AIに任せてはいけない判断は?
故障の診断、保安基準に合うかどうか、部品代と工賃の3つです。AIを使い始める前に、この3つは任せないと工場の中で決めておきます。
1つ目は、故障の診断と、整備が必要かどうかの判断です。AIは車を見ていないため、メモにない原因や部品を書き足すと、事実と違う説明になります。
2つ目は、保安基準に適合するかどうかの判断です。車検の検査や、指定工場での保安基準適合証の交付は、資格を持つ人と検査機器が担います。2024年10月からは、対象となる国産車の車検でOBD検査(車に記録された故障の情報を専用の機器で読み取る検査)も始まっています。
3つ目は、部品代と工賃です。金額は整備管理ソフトと見積書の数字を正とし、AIには計算も推測もさせません。

見積の説明で法令が
求めていること
説明文の指示文を書く前に、見積の説明で求められていることを確認します。
施行規則が求める、
整備の説明と概算見積り
道路運送車両法施行規則の第62条の2の2は、自動車特定整備事業者が守る事項を定めています。
そのうち、道路運送車両法第48条に規定する点検又は整備(定期点検整備)の作業を行う事業場には、依頼者に対して「必要となると認められる整備の内容及び当該整備の必要性について説明し、料金の概算見積りを記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供すること」が求められています(e-Gov法令検索で2026年10月15日に確認)。
AIで作る説明文は、この概算見積りの書面や電磁的記録の代わりにはなりません。見積書は、これまでどおり整備管理ソフトなどで作って渡し、説明文はそれを読み解くための添え書きとして使います。
同じ条は、行っていない点検や整備の料金を請求すること、依頼されていない整備を不当に行って料金を請求することも禁じています。追加整備でお客様の承諾を取り、その記録を残す作業は、法令を守るための手順でもあります。
見積を出したあとに追加の整備が必要になった場合の扱いは、国土交通省の通達「自動車整備事業の取扱い及び指導要領」(2026年10月15日に確認)に書かれています。
あらかじめ了解を得ている場合を除き、追加整備の内容と変更後の概算見積りを依頼者に連絡し、承諾を得てから作業します。そのうえで、事業者控えの概算見積りの書面か電磁的記録に、承諾年月日、必要となった整備の内容、変更後の概算見積りの額を残します。
条文も要領も、書面の交付と並べて電磁的記録の提供を挙げています。LINEやメールで見積を送る場合の扱いは、所属する整備振興会や運輸支局に確かめてから決めてください。
説明文に入れる項目と、
入れない項目
条文が求める「整備の内容」と「必要性」を軸に、AIに書かせる項目を決めます。
| 項目 | 説明文に入れるか | 理由 |
| 整備の内容(何をするか) | 入れる | 条文が説明を求めている |
| 整備が必要な理由 | 整備士のメモに書かれた範囲で入れる | 必要性の説明が求められている。メモにない理由は書かない |
| 必須・推奨・様子見の区分 | 整備士が決めた区分のまま入れる | お客様がやる・やらないを選べるようにする |
| 金額 | AIには書かせず、見積書の数字を人が書き入れる | 計算の誤りと書き写しの漏れを防ぐ |
| 故障の原因の推測 | 入れない | 車を見ていないAIの推測が、事実のように伝わる |
| 不安をあおる言い方 | 入れない | 「このままだと事故になります」などは、お客様の判断を急がせる |
① 整備士のメモから
車検見積の説明文を作る
最初に試すのは、整備士の点検メモをお客様向けの説明文に直す作業です。
点検メモは
「部位・状態・区分」の3つで書く
AIへの材料は、整備士が普段書いている点検メモで足ります。ただし、部位と状態に加えて、必須・推奨・様子見の区分を整備士が書いておくことが条件です。区分のないメモを渡すと、AIが重要度を自分で決めてしまいます。
次のメモは架空の例です。区分と理由は架空の整備士が書いた判断で、車検の合否の基準を示すものではありません。
車両:軽自動車(平成30年式)走行8.2万km
お客様の希望:費用はできるだけ抑えたい
1. 左前ドライブシャフトブーツ 破れ、グリースが飛んでいる → 必須(車検に通らない)
2. 前ブレーキパッド 残り3mm → 推奨(次の12か月点検まで持たない見込み)
3. バッテリー 充電してから再テストしても判定「要交換」 → 推奨(冬前に交換したほうがよい)
4. エンジンヘッドカバー オイルにじみ(垂れてはいない) → 様子見(次回点検で再確認)
5. ワイパーゴム 運転席側 切れ → 推奨
説明文を作る指示文
次の指示文の最後に点検メモを貼って使います。お客様の氏名・住所・電話番号、ナンバー(登録番号)、車台番号は、貼る前にメモから消してください。汎用の生成AIに入れるのは、車種・年式・走行距離と、部位・状態・区分だけで足ります。
あなたは自動車整備工場のフロント担当です。
次の【点検メモ】をもとに、車検の見積をお客様に説明する文章を作ってください。
# 守ること
・メモに書かれていない故障、原因、部品、危険を書き足さないでください。
・「必須」「推奨」「様子見」の区分は、メモのとおりに書いてください。区分を変えたり、推奨の整備を必須のように書いたりしないでください。
・金額、工賃、作業時間は書かないでください。「必要な整備」と「おすすめの整備」の各項目の最後に「金額:【見積書の金額】」とだけ書いてください。様子を見る箇所には金額の欄を付けないでください。
・LINEや紙にそのまま貼れるよう、#や*などの記号は使わず、見出しは■で書いてください。
・お客様の名前は書かず、「お客様」と書いてください。
・専門用語には、かっこ書きで一言の説明を付けてください。
例:ドライブシャフトブーツ(タイヤに力を伝える軸を覆うゴムのカバー)
・「事故になります」「危険です」など、不安をあおる言い方はしないでください。
・メモから読み取れないことは、その箇所に【要確認:○○】と書いてください。
# 出力の形
1. 冒頭のあいさつ(2文まで)
2. 「今回の車検で必要な整備」「おすすめの整備」「今回は様子を見る箇所」の3つの見出しに分けた説明
各項目は「どこが」「どんな状態で」「なぜ整備するか」を2〜3文で書く
3. 「おすすめの整備」は今回見送ることもできると、一文で伝える
4. 最後に、見積の内容で分からない点があれば聞いてほしいと伝える一文
【点検メモ】
(ここに整備士のメモを貼る)
出力の見本と、
フロント担当が直す箇所
上の指示文に架空のメモを入れた場合に期待する出力を、編集部が見本として書きました。AIの出力をそのまま載せたものではありません。
お客様
このたびは車検のご依頼をいただき、ありがとうございます。点検の結果と見積の内容をご説明します。
■ 今回の車検で必要な整備
・左前のドライブシャフトブーツ(タイヤに力を伝える軸を覆うゴムのカバー)が破れ、中のグリースが外に出ています。整備士の点検で、このままでは車検に通らないと判断しました。ブーツを交換します。金額:【見積書の金額】
■ おすすめの整備
・前のブレーキパッド(ブレーキをかけるときに押し当てる部品)の残りが3mmです。次の12か月点検まで持たない見込みのため、交換をおすすめします。金額:【見積書の金額】
・バッテリーを充電してから点検し直しても「要交換」と判定されました。冬に入る前の交換をおすすめします。金額:【見積書の金額】
・運転席側のワイパーゴムが切れています。交換をおすすめします。金額:【見積書の金額】
おすすめの整備は、今回は見送ることもできます。
■ 今回は様子を見る箇所
・エンジン上部のカバーから、オイルがわずかににじんでいます。垂れるほどではないため今回は作業せず、次回の点検で状態を確認します。
見積の内容で分からない点があれば、お気軽にお尋ねください。
この指示文は、2026年10月15日に汎用の生成AI(OpenAIのgpt-6-sol)へ上の架空のメモを入れ、直しながら3回試しました。区分はどの回もメモのとおりに分かれました。最初の回では見出しに「###」「**」などの記号が付き、金額の欄が最後に1つだけ置かれたため、記号と金額の欄についての2行を「守ること」に足しています。
2回目では、様子を見る箇所にも金額の欄が付き、ワイパーゴムの説明にメモにない理由(ガラスを拭く部分のため)が足されました。金額の欄は指示文を直すと付かなくなりましたが、足される理由は指示文だけでは防ぎきれないため、人が確かめます。
出力を受け取ったら、フロント担当がメモと1行ずつ見比べ、次の3点を確かめます。
- 区分が変わっていないか:推奨の項目が「必要な整備」に移っていないか
- メモにない説明が増えていないか:「燃費が悪くなります」など、整備士が書いていない理由が足されていないか
- 金額の欄が残っていないか:【見積書の金額】を見積書の数字に置き換えたか
AIは、指示に書いてあっても、もっともらしい理由を足すことがあります。整備士が書いていない理由が出てきたら、削除するか、整備士に確かめてから残します。
引き渡しの説明にも
同じメモを使う
引き渡しの説明文も、同じ点検メモと作業の記録から作れます。指示文の「出力の形」を「実施した整備」「今回見送った整備」「次回の点検で見る箇所」に替えると、見送ったおすすめ整備を次回の案内につなげられます。
説明文に書いた作業が実際に行われたかは、整備の記録と見比べて確定します。分解整備などの特定整備の記録簿への記載は、施行規則上、整備主任者が統括して管理する事項です。

② 追加整備の承諾を取る
連絡文を作る
次は、車検や点検の作業中に新しく見つかった整備について、お客様に追加整備の承諾を取る連絡です。
承諾の連絡に入れる5つのこと
追加整備の連絡は、お客様が仕事の合間にスマートフォンで読むことの多い文章です。読んだその場で「お願いする・見送る」を返事できるように、判断に必要な情報を1通にそろえます。
| 入れること | 書き方の例(架空) | 抜けると起きること |
| 見つかったこと | エアコンのフィルターが汚れて、目詰まりしています | 何の話か分からず、電話での問い合わせが増える |
| 整備士の判断 | 必須か推奨のどちらか | お客様が急いで決めるべきか分からない |
| 追加の金額と、変更後の見積の合計(税込) | 作り直した見積書の数字を人が書き入れる | 請求のときに「聞いていない」と言われる |
| 納車への影響 | 部品の取り寄せで、お渡しが1日延びます | 代車や仕事の予定が崩れる |
| 返事の期限と、見送る選択肢 | 本日17時までにご返信ください。見送る場合もお知らせください | 返事待ちで作業が止まる |
ブレーキ、タイヤ、ステアリングのように安全に関わる箇所で見つかった不具合は、AIの連絡文で済ませません。整備士が状態を確かめたうえで、電話で直接説明すると工場で決めておきます。
追加整備の連絡文を作る指示文
材料の3項目はフロント担当が埋め、文章だけをAIに作らせます。金額はAIに渡さず、できた文章の欄に人が書き入れます。
あなたは自動車整備工場のフロント担当です。
作業中に見つかった追加整備について、お客様に承諾をいただくための連絡文を作ってください。
# 材料
【整備士のメモ】(見つかった箇所・状態・必須か推奨か)
【納車への影響】(例:変更なし/部品の取り寄せで1日延びる)
【返事の期限】(例:本日17時まで)
# 守ること
・材料に書かれていない故障、原因、危険を書き足さないでください。
・金額は書かず、「追加の金額は【追加の金額(税込)】、変更後の見積の合計は【変更後の見積の合計(税込)】です。」という1文で欄を残してください。
・#や*などの記号は使わないでください。
・「必須」か「推奨」かを、材料のとおりに書いてください。
・推奨の場合は、今回見送ってもよいこと、見送った場合は次回の点検で状態を確認することを書いてください。
・お客様が「お願いします」か「今回は見送ります」で返事できるように、最後に返事の仕方を書いてください。
・お客様の名前は書かず、「お客様」と書いてください。
・不安をあおる言い方はしないでください。
# 出力
1. LINE・SMS用の連絡文(200字以内)
2. 電話で伝える場合の要点(箇条書き5行以内)
推奨の整備の場合に期待する連絡文の見本です(編集部が書いた架空の例で、AIの実行結果ではありません)。
お客様
車検の作業中にエアコンのフィルター(車内に入る空気のほこりを取る部品)の汚れと目詰まりを見つけました。整備士の判断は「推奨」で、見送る場合は次回の点検で状態を確認します。
追加の金額は【追加の金額(税込)】、変更後の見積の合計は【変更後の見積の合計(税込)】です。交換する場合は部品の取り寄せで、お渡しが1日延びます。
本日17時までに「お願いします」か「今回は見送ります」とご返信ください。
この指示文も同じ日に同じAIで試しました。最初の回では2つの金額の欄が文から離れて1行ずつ置かれたため、欄を1文で残す指示を足しています。直した後の出力は、推奨であること、見送れること、返事の期限まで材料のとおりでした。
2つの金額の欄は、送る前にフロント担当が書き入れます。整備管理ソフトなどで作り直した見積と、書き入れた2つの金額が合っているかを照らし合わせてから送ります。
承諾の返事は、
何を記録すればよい?
承諾した日時、返事をくれた人、連絡の手段、承諾した作業、変更後の見積の金額の5つです。返事をもらったら、事業者控えの見積(整備管理ソフトの見積など)にこの5つを書き残します。
国土交通省の指導要領が残すよう求めているのは、承諾年月日、必要となった整備の内容、変更後の概算見積りの額です。返事をくれた人と連絡の手段は、後から確かめられるようにこの記事で加えた項目です。
LINEやSMSの返事は画面に残りますが、電話で承諾を得た場合は、通話の直後に記録しないと後から確かめられません。AIで連絡文を作っても、承諾があったかどうかを判断するのはフロント担当です。「たぶん大丈夫です」のようなはっきりしない返事なら、もう一度確かめてから作業に入ります。

③ 部品の発注メモを
部品商への依頼文にする
3つ目は部品の発注です。整備士の走り書きを、部品商に送る依頼文の形に整えます。
発注の依頼文を作る指示文
部品商への発注は、電話、FAX、部品商のWeb発注など、工場や取引先ごとに方法が違います。AIに任せるのは、整備士のメモを部品商が確認しやすい並びに整えるところまでです。
あなたは自動車整備工場の部品発注の担当です。
次の【発注メモ】を、部品商に送る発注の依頼文に整えてください。
# 守ること
・部品名、品番、数量は、メモに書かれたとおりに書き写してください。補ったり、似た品番に直したりしないでください。
・メモに品番がない部品は、品番の欄に【品番未確認】と書いてください。
・届けてほしい日時がメモにない場合は【納期を確認】と書いてください。
・車両の情報は【型式】【車台番号】の欄だけを作り、中身は空けておいてください。
# 出力の形
・あいさつ1文
・部品ごとに「部品名/品番/数量」を1行ずつ
・車両の情報(【型式】【車台番号】)
・希望の納期と、在庫がない場合は連絡がほしいこと
・【工場名】【担当者名】の欄(そのまま残す)
【発注メモ】
(ここに整備士のメモを貼る)
この指示文に、品番のある部品1つと品番のない部品2つを書いた架空のメモを入れて試したところ、品番のない2つには【品番未確認】が入り、メモにあった品番はそのまま写されました。
【品番未確認】【納期を確認】が残った依頼文は、そのまま送りません。空いた欄を埋めてから送ることを、発注のたびに確かめます。
部品の品番をAIに
調べさせてもよい?
品番と適合は、AIに決めさせません。品番は、部品カタログや部品商の検索で人が確かめてから発注します。
同じ車種でも、年式やグレードによって合う部品が変わることがあります。
汎用の生成AIに「この車に合うブレーキパッドの品番は」と聞くと、もっともらしい品番を答えることがあります。その品番が実在するか、その車に合うかは保証されません。
複数の部品商から見積を取って比べる場合は、相見積もりの比較表の作り方で、数量・送料・納期をそろえて比べる手順を説明しています。
④ 車検の案内と、
予約への返信を作る
4つ目は、車検の満了が近いお客様への案内と、予約の希望への返信です。
車検の案内文を作る指示文
車検は、有効期間が満了する日の2か月前から受けても、残りの有効期間が失われません。道路運送車両法施行規則第44条の改正で、2025年4月1日から、それまでの1か月前から2か月前に広がりました(国土交通省の報道発表。2026年10月15日に条文とあわせて確認)。
案内文の材料は、整備管理ソフトの台帳にある満了日と、前回の車検で見送ったおすすめの整備です。前回見送った整備を案内に書いておくと、お客様は今回の車検で何を相談すればよいかが分かります。
あなたは自動車整備工場のフロント担当です。
車検の満了が近いお客様に送る、車検の案内文を作ってください。
# 材料
【車種】(例:軽自動車)
【車検の満了日】(例:12月15日)
【前回見送った整備】(例:前のブレーキパッドの交換。なければ「なし」)
【予約の受け方】(例:LINE・SMSは「このメッセージへの返信」、はがきは「お電話」)
# 守ること
・お客様の名前は書かず、「お客様」と書いてください。
・車検の料金、割引、空いている日時は書かないでください。
・満了日は材料のとおりに書いてください。
・前回見送った整備は「前回の車検でおすすめした整備」として事実だけを書き、故障や危険を書き足さないでください。
・予約の日時を約束する書き方(「○日にお受けできます」など)はしないでください。
・#や*などの記号は使わないでください。
# 出力
1. LINE・SMS用の案内文(200字以内)
2. はがき用の案内文(300字以内)
予約の日時と代車は、
予約台帳を見て人が決める
お客様から予約の希望が届いたら、返信の下書きはAIに任せられます。ただし、入庫の日時、作業の枠、代車の有無は、フロント担当が予約台帳を見て決めます。AIは工場の予約台帳を見ていないため、空いていない日を「お受けできます」と書いてしまうことがあります。
返信の下書きには、次の指示文を使います。お客様からのメッセージは、名前や電話番号を消してから貼ります。
あなたは自動車整備工場のフロント担当です。
次の【お客様からのメッセージ】に返信する文章を作ってください。
# 守ること
・この返信は、フロント担当が予約台帳で日時と代車を決めた後に送ります。「改めて連絡します」とは書かず、「入庫の日時は【確定した入庫日時】、代車は【代車の有無】です。」という1文で欄を残してください。料金は書かないでください。
・空いている日や、予約を受けられるかどうかを推測して書かないでください。
・お客様の名前は書かず、「お客様」と書いてください。
・150字以内で書いてください。
【お客様からのメッセージ】
(ここに貼る)
2つの指示文も同じ日に同じAIで試しました。最初の回では、はがき用の案内に「このLINEへの返信」と書かれ、予約への返信には「改めてご連絡いたします」と書いたうえで日時の欄が並びました。予約の受け方を送り方ごとに分けて書くことと、日時が決まった後に送る前提で書かせることは、この結果を受けて足した指示です。
欄に入れる日時と代車は、予約台帳で枠を押さえてから書き入れます。台帳に書き込む前に返信を送らないことを、工場の決まりにしておきます。
整備管理ソフトとAIは、
どう役割を分ける?
台帳・見積・請求・記録簿は整備管理ソフトに残し、AIにはお客様や部品商に送る文章の下書きだけを任せます。そのうえで、AIを足したあとに手作業がどこに残るかを見れば、ソフトとつなぐ必要があるかを判断できます。
手作業が残る3つの箇所
整備管理ソフトで顧客と車両の台帳、見積、請求、記録簿を作っている工場が、そこへ汎用の生成AIを足すと、次の3か所に手作業が残ります。
- ソフトからAIへの貼り付け:点検メモや見積の内容から、氏名やナンバーなどを消したうえで、AIの画面に貼り付ける作業
- AIからLINE・SMSへの貼り付け:できた連絡文を、お客様ごとの宛先に貼って送る作業。送り先を取り違えるおそれがある
- 承諾の書き戻し:LINEや電話でもらった返事を、ソフトの見積や作業指示に記録する作業
扱う台数が少ないうちは、手作業が残っていても、文章を一から書く時間が減るかを先に試せます。送り先の取り違えや承諾の書き漏れが起きたら、まずその連絡を止め、どの貼り付けで間違えたかを確かめます。手順を直しても同じ間違いが続くなら、ソフトとつなぐ段階です。
同じ問い合わせに二重に返信しない仕組みは、問い合わせメールの返信を生成AIで効率化する記事で説明しています。
汎用の生成AIから、
ソフトとつなぐまでの3つの段階
| 段階 | やること | 次に進む目安 |
| 1 汎用の生成AIで下書きする | この記事の指示文を使い、フロント担当がメモを貼って説明文や連絡文を作る | 1件にかかる時間と、直した箇所を1か月記録した |
| 2 工場で使い方をそろえる | 指示文、点検メモの書き方、専門用語の言い換えを工場で1つに決める | 担当者が替わっても、同じ形の説明文が出る |
| 3 ソフトやLINEとつなぐ | 整備管理ソフトの点検結果から説明文を作り、承諾の返事を見積に記録する仕組みを作る | 送り先の取り違えや承諾の書き漏れが、手順を直しても続いている |
段階3でできることは、整備管理ソフトにデータを取り出す機能や、外部とつなぐ機能があるかどうかで変わります。
整備管理ソフトの
提供会社に確かめること
つなぐことを考え始めたら、先にソフトの提供会社へ次の内容を問い合わせます。文面はそのまま使えます。
【工場名】の【担当者名】です。
現在利用している【ソフト名】について、次の点を教えてください。
1. 点検結果や見積の明細を、CSVなどのファイルで取り出せますか。
2. 外部のシステムとつなぐための仕組み(API)や、連携できる他社のサービスはありますか。
3. 見積の説明文や、お客様への連絡文を作る機能はありますか。追加の予定はありますか。
4. お客様の承諾(日時・内容・金額)を、見積や作業指示に記録する欄はありますか。
5. 上記の機能を使う場合、追加の費用や契約の変更は必要ですか。
3つ目の答えによっては、AIを別に用意しなくても済む場合があります。いま使っているソフトの機能で足りるなら、それを使うのが最も手間がかかりません。

お客様の情報を
AIに入れる前に決めること
点検メモや見積をAIに貼る前に、入れてよい情報と入れない情報を工場で決めます。
個人情報保護委員会は、令和5年6月2日の生成AIサービスの利用に関する注意喚起等で、事業者が個人情報を含む指示文を生成AIに入力する場合は、利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認するよう求めています。
| 情報 | 汎用の生成AIへの入力 | 代わりにすること |
| お客様の氏名・住所・電話番号 | 入れない | 「お客様」と書かせ、送る前に人が宛名を入れる |
| ナンバー(登録番号)・車台番号 | 入れない | 【車台番号】などの欄だけ作らせ、人が書き入れる |
| 車種・年式・走行距離 | 工場のルールで決める | 説明に必要な範囲だけ入れる。車名まで要るかを決めておく |
| 整備士の点検メモ | 名前やナンバーを消してから入れる | 貼る前に1行ずつ見直す |
スタッフが個人で登録したAIのアカウントに、お客様の情報を貼る使い方は避けます。工場として契約したサービスを使い、入力した内容が学習に使われない設定かを確かめてから始めます。
最初の1か月は、
何を測ればよい?
説明文1件にかかる時間、フロント担当が直した箇所、追加整備の返事が来るまでの時間の3つです。試す作業は、見積の説明文だけ、あるいは追加整備の連絡だけのように、1つに絞ります。
時間の2つは、AIを使う前の1週間にも同じ方法で測っておきます。説明文1件に何分かかったか、連絡を送ってから返事まで何時間かかったかを紙に書くだけで、前後を比べられます。どの作業から試すか迷う場合は、業務棚卸し表で作業ごとの件数と時間を先に書き出すと選びやすくなります。
出力がずれたときの直し方
時間が短くなっても直す箇所が減らないなら、指示文か点検メモの書き方を見直します。フロント担当が直した箇所を、次の表の「よくあるずれ」に当てはめると、どこを直せばよいかが分かります。
| よくあるずれ | 考えられる原因 | 直し方 |
| 推奨の整備が「必要な整備」に入っている | 点検メモに区分が書かれていない、または「要交換」「早めに」など書き方が人によって違う | 区分は「必須・推奨・様子見」の3語だけを使うと工場で決め、整備士のメモに必ず書く |
| メモにない理由や危険が足されている | AIが説明を分かりやすくしようとして、一般的な理由を補っている | 足された文は削除する。同じずれが続くなら、指示文の「守ること」の1行目に「理由はメモの文言だけを使う」と書く |
| 専門用語の言い換えが毎回違う、または不正確 | 言い換えをAIに任せている | よく出る部品の言い換えを工場で決めて一覧にし、指示文の最後に貼る |
| 【要確認】が多く、手直しが減らない | 点検メモに状態や区分が抜けている | AIの指示文ではなく、点検メモを「部位・状態・区分」の形に戻す |
| 文章が長く、お客様から電話で聞き返される | 長さの指定がない、または項目が多すぎる | 1項目2〜3文、連絡文は200字以内と指示文に書く。項目が多い車は、様子見の箇所を引き渡しの説明に回す |
| 金額の数字が入っている | 見積書の金額を一緒に貼っている | 金額は貼らずに【見積書の金額】の欄で受け、送る前に人が見積書から書き写す |
引き渡しの後にいただくGoogleの口コミへの返信も、同じ考え方で下書きできます。低評価への返信を含めた指示文は、Google口コミの返信を生成AIで作る記事にまとめています。
まとめ:整備士のメモを、
伝わる文章に直す作業から始める
自動車整備のAI活用で、最初に効果を確かめやすいのは、整備士の点検メモをお客様向けの説明文や連絡文に直す作業です。整備が必要かどうか、保安基準、金額の判断は人に残し、AIには文章の下書きだけを任せます。
まずは今週入庫した車検1台分の点検メモで、説明文の指示文を試してください。出てきた文章とメモを並べて直した箇所を記録すれば、自分の工場に合わせて指示文を直せます。
整備管理ソフトとLINEの間の貼り付けや、承諾の書き戻しが負担になってきたら、ソフトとつなぐことを考える時期です。まるっとAIでは、いまの整備管理ソフトと連絡の流れを確かめたうえで、AIに任せる作業とつなぐ範囲を整理し、仕組みづくりと運用まで月額でお引き受けしています。