警備会社のAI活用は、カメラやロボットを入れる前に、紙の警備報告書の清書と、配置表・請求書との突き合わせから試すのが、始めやすい順番です。月末に報告書の束を前にして、配置表と見比べながら請求書を作っている社長や管制担当の方なら、設備を買わずに今の紙とExcelのまま試し、作業時間がどう変わるかを測れます。
この記事に載せたのは、隊員のスマホメモから警備報告書の下書きを作る指示文、手書きの報告書を表に起こして配置表と突き合わせる指示文、報告書の項目表です。AIに任せるのは読み取り・清書・食い違いの洗い出しまでで、事故や異常の判断、依頼者への報告の確定、請求する人数と金額の確定は人が行います。
試す前に依頼者との契約を確認し、外部サービスへ出せる情報の範囲と、会社で使うAIのサービスを決めます。そのうえで施設警備の現場を1つ選び、隊員のメモ1日分を使って清書の指示文を試してください。出力を元のメモと照らし、使えるかどうかを確かめます。
記事内の現場・メモ・報告書・出力は、説明用に作った架空の設計例です。特定の会社の事例や、AI製品を試験した結果ではありません。法令は2026年10月15日にe-Gov法令検索で、省庁の資料は同じ日に各省庁のサイトで原文を確認しました。
この記事で分かること
- AIに下書きや読み取りを頼む前に、報告書の項目を決めておきます
- 隊員の氏名、施設の名前、鍵や巡回の詳しい情報は、汎用の生成AIには入れないのが基本です
- 始める範囲は、1か月で効果を数字で確かめられる大きさにとどめます
警備のAI活用は、監視と
事務の2つに分かれる
「警備 AI」で調べると、AIカメラや警備ロボットの話と、報告書や配置の事務の話が混ざって出てきます。最初に2つを分けておきます。
AIカメラや警備ロボットは、
監視と巡回を手伝う設備
AIカメラは映像から侵入や転倒などの異常を見つけて知らせる道具で、警備ロボットは決まった経路を巡回する機械です。どちらも施設に置く設備なので、費用や設置場所は依頼者と一緒に決めることになります。
交通誘導でも、規制区間の両端に置いたカメラで車両を見つけ、AIが片側交互通行の表示を切り替える装置が出てきました。国土交通省北陸地方整備局は、道路の復旧工事で使われた例を紹介しています(AI交通誘導システム)。こうした装置を置くかどうかも、工事の元請けなどの依頼者と相談して決めます。
センサーやカメラの情報を離れた基地局で受け、警備員が駆けつける形は、警備業法の「機械警備業務」に該当する場合があります。その場合は公安委員会への届出(第40条)と、基地局ごとの機械警備業務管理者の選任(第42条)が必要です(警備業法)。対象施設の数などの条件を満たして公安委員会の承認を受ければ、1人の管理者が複数の基地局を受け持てる例外もあります(警備業法施行規則第60条)。AIカメラが知らせた後に駆けつけ、事実を確かめ、通報するのは人です。
中小の会社で先に試しやすいの
は、
報告書・配置・請求の事務
一方、隊員が書いた報告書を集めて読み、依頼者向けに清書し、配置表と見比べて請求書を作る作業が、事務所に残っている会社もあります。こちらは設備を買わずに、今ある紙とExcelのまま試せます。
| 比べる点 | 現場の監視に使うAI | 事務所の作業に使うAI |
| 何をするか | 映像から異常を見つけて知らせる、巡回する | 報告書の清書、表への書き起こし、食い違いの洗い出し |
| 始めるのに要るもの | カメラやロボットなどの設備と、依頼者との調整 | 今の報告書とExcel、依頼者との契約の確認、会社が契約した業務用サービス |
| 誰が決めるか | 依頼者と警備会社 | 依頼者との契約で外部に出せる範囲を確かめたうえで、警備会社が決める |
| 人が行うこと | 駆けつけ、事実の確認、通報 | 事故・異常の判断、報告と請求の確定 |
この記事が扱うのは、事務所の作業に使うAIです。AIカメラや警備ロボットの選び方は扱いません。
報告書から請求まで、
同じ数字を何回書いているか
交通誘導の現場を1件たどると、開始と終了の時刻や人数が、配置表から給与まで5か所に出てきます。どこで同じ情報を書き直しているかを、工程の順に確かめます。
受注から給与まで、
1件の現場をたどる
例は、交通誘導の1日の現場です。管制担当が配置表を作り、隊員は上番と下番を電話やLINEで知らせます。現場では隊員が警備報告書を書き、依頼者側の現場責任者から確認をもらうのが流れです。
報告書は事務所に回収され、その数字が請求書と給与の計算に使われます。開始と終了の時刻や人数は、配置表・上下番の記録・報告書・請求書・給与の5か所に出てきますが、記録ごとに意味が違います。配置表は予定、上下番の記録は実際の勤務、報告書は依頼者が確認した実績、請求書は契約の単位で数えた量で、給与のもとになるのは隊員ごとの労働時間です。
| 工程 | 書いている情報 | AIで試す作業 | 人が決めること |
| 配置表を作る | 予定の現場・日時・必要人数・資格 | 希望休と必要人数を並べた候補表 | 誰をどの現場に置くか |
| 上番・下番の報告 | 実際の開始・終了の時刻 | LINEの報告を時刻の表にまとめる | 遅刻や欠員への対応 |
| 警備報告書 | 依頼者が確認した時刻・人数・隊員 | 手書きの用紙を写真から表に起こす | 読めない字の確認 |
| 請求書 | 契約の区分で数えた人数・日数・残業 | 報告書と配置表の食い違いを並べる | 請求する区分と金額 |
| 給与 | 隊員ごとの労働時間 | 上下番の記録と報告書の時刻の食い違いを並べる | 労働時間の確定と支給額 |
給与は、報告書の時刻をそのまま使うのではなく、上下番の記録などで確かめた労働時間の記録をもとに計算します。厚生労働省のガイドラインも、使用者が労働日ごとの始業と終業の時刻を確認して記録するよう求めています(労働時間の適正な把握のためのガイドライン)。
施設警備では、このほかに依頼者へ出す警備日報の清書も事務所の仕事です。隊員の短いメモを報告文に整える作業なので、指示文は照合とは別に載せました。シフトの組み方は、シフト作成の生成AI活用で説明しています。
交通誘導と施設警備で、
警備報告書の役目は違う?
違います。同じ「警備報告書」という名前でも、交通誘導では実績を確かめる伝票、施設警備では依頼者への業務の報告という性格が強い文書です。
交通誘導の報告書は、現場名・日付・開始と終了の時刻・人数・隊員を書き、依頼者側の確認を受けて請求の根拠にする伝票として使われることが多い文書です。複写式の用紙を使う会社もあります。ここでのAIの役目は、手書きの用紙を表に起こし、配置表と比べることです。
施設警備の報告書(警備日報)は、巡回の時刻、異常の有無、来訪者の出入り、鍵の受け渡し、引継ぎ事項を依頼者に伝える文書です。こちらでのAIの役目は、隊員の短いメモを読める報告文に整えることになります。
どちらの報告書を扱うかで、AIへの頼み方が変わります。そのため、清書の指示文と照合の指示文は分けて載せました。

警備報告書に書く項目と、
テンプレートの決め方
AIに下書きや読み取りを頼む前に、報告書の項目を決めておきます。項目を指定すると、出力が必要な形になっているかを確かめやすくなります。
交通誘導の
警備報告書に入れる項目
次の表は、請求と給与まで同じ用紙の数字でつなぐことを考えた項目の例です。右の列は、その項目が後でどこに使われるかを示しています。
| 項目 | 書く内容(架空例) | 後で使う所 |
| 現場名・依頼者 | ○○線 舗装工事(依頼者A) | 請求先、配置表との照合 |
| 日付・天候 | 10月16日・晴れ | 請求の日付、中止の日の確認 |
| 開始・終了・休憩 | 8:00〜17:00、休憩60分 | 請求する実績の確認。給与は別の労働時間の記録も照合する |
| 残業 | 17:00〜17:30 | 追加請求の確認。給与は別の労働時間の記録も照合する |
| 人数と隊員 | 3名(隊員番号で書く) | 請求の人数、給与 |
| 検定合格警備員 | 交通誘導警備業務2級 1名 | 配置の基準を満たしたかの確認 |
| 業務内容 | 片側交互通行の誘導 | 依頼者への報告 |
| 特記事項 | 事故・苦情・ヒヤリハットの有無 | 社内の報告、依頼者への連絡 |
| 確認欄 | 依頼者の現場責任者の確認 | 請求の根拠 |
検定合格警備員の欄を設けるのは、配置の基準があるためです。高速自動車国道や自動車専用道路、公安委員会が危険防止のため必要と認めた道路で交通誘導を行うときは、交通誘導警備業務の1級または2級の検定に合格した警備員を、場所ごとに1人以上配置することが定められています(警備員等の検定等に関する規則第2条)。
報告書にその日の検定合格警備員が書かれていれば、配置表と見比べて、確かめるべき日を絞り込めます。ただし、必要な場所ごとに実際に配置されていたか、途中で交代がなかったか、資格を持つ本人だったかは、上下番の記録や隊員への確認で人が確かめます。
施設警備の警備日報に入れる項目
施設警備の報告書は、依頼者が読む文書です。項目ごとに、AIにどこまで任せるかも一緒に決めておきます。
| 項目 | 書く内容 | AIに任せる範囲 |
| 勤務者と勤務時間 | 隊員番号・勤務区分・上番と下番の時刻 | メモから書き写すだけ |
| 巡回 | 時刻・経路・結果 | 時刻順に並べ、結果の書き漏れを指摘する |
| 来訪者・入退館 | 時刻・相手の区分・確認した書類 | 時系列に整える |
| 鍵の受け渡し | 受け渡しの時刻と、本数が合っていたか | 書き写すだけ(本数や保管場所は書かせない) |
| 報告事項・処理状況 | 設備の不具合、落とし物など | 文章に整える。事実は足させない |
| 引継ぎ事項 | 次の勤務者に伝えること | メモにある引継ぎだけを書く。なければ「記載なし」 |
日報の基本的な書き方は日報の書き方と例文でも説明しています。警備の報告書で違うのは、依頼者に出す文書であり、報告の中身が契約で決まっている点です。
報告の方法と頻度は、
契約の書面で決まっている
警備業法第19条は、警備業者が契約の前と契約の後に、依頼者へ書面を渡すことを定めています(依頼者の承諾があれば、電子メールなどの電子的な方法で渡すこともできます。同条第3項)。施行規則第33条と第34条は、その書面に「報告の方法、頻度及び時期その他の警備業務の依頼者への報告に関する事項」を書くよう定めています(警備業法施行規則)。
報告書のテンプレートを作り直すときは、まず契約の書面にある報告の欄を読みます。日報を毎日出す約束なのか、月に1回まとめて出すのかで、AIに作らせる文書の形が変わるからです。
警備報告書の保管期間は何年?
一律の年数はなく、報告書を何の根拠に使っているかで変わります。2026年10月15日にe-Govの原文で確かめた範囲では、依頼者に出す警備報告書を名指しした保存期間の定めは、警備業法と施行規則の中に見当たりませんでした。
施行規則第66条が営業所に備えるよう定めているのは、警備員の名簿、教育の計画と実施の記録、指導計画書、契約ごとの記録、苦情の記録などです。保存の期間は、警備員の名簿が退職の日から1年、指導計画書が実地に指導した日から2年、教育の計画と記録が年度の終了から2年と定められています。
報告書を請求や勤務時間の根拠に使っているなら、税務や労務の法律で保存期間が決まる書類に該当する場合があります。たとえば法人税では、取引に関して作成・受領した書類を、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存します(国税庁 帳簿書類等の保存期間)。労働基準法では、出勤簿など労働時間の記録に関する書類を5年間(経過措置で当分の間は3年間)保存します(厚生労働省 労働関係書類の保存期間)。
自社の報告書がこれらに当たるかを顧問の税理士と社会保険労務士に確かめ、法律で決まる年数を先に押さえます。契約の書面や社内規程で決めるのは、それより長く残すかどうかです。紙の報告書をスキャンして原本を捨てたい場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件がかかるかも税理士に確かめてください(国税庁 電子帳簿保存法関係)。
隊員のスマホメモから、
警備報告書を作る指示文
ここからは、施設警備の報告書を、隊員の短いメモから清書する手順です。
隊員に送ってもらうメモの形
メモは、時刻と出来事を1行ずつ書いてもらいます。文章になっていなくて構いません。スマホの音声入力を使う場合も、管制担当へ送る前に隊員が内容を読み返します。
氏名は隊員番号に、施設の名前は記号にしてもらいます。巡回経路や時刻、出入口、設備の情報など、依頼者との契約で外部サービスに渡せない内容が残るメモは、AIに貼らず人が清書します。次は架空のメモです。
10/16 夜勤 隊員No.12 現場A
22:00 上番 前勤務者から引継ぎ 鍵の本数OK
22:30 巡回1 B棟3F 非常灯1か所つかない
23:40 通用口 業者2名 入館 作業許可書あり
0:10 業者 退館
2:00 巡回2 異常なし
5:30 巡回3 駐車場 自転車1台 放置?
7:50 鍵 引継ぎ 本数OK 下番
メモをAIに貼る前に、
管制担当が確かめること
管制担当はメモを受け取ったら、AIに貼る前に自分で一度読みます。確かめるのは次の3つです。
- 異常の行がないか:事故・けが・侵入・火災・設備の不具合が書かれていたら、清書より先に隊員へ事実を確かめ、施設の担当者や警察・消防への連絡を判断します。
- どのサービスに貼るか:使うのは、会社が契約し、入力が学習に使われないことを契約や設定で確かめた業務用のサービスだけです。依頼者との契約で、報告の内容を外部のサービスに渡してよいかも確かめておきます。
- 消す情報と置き換える情報:鍵の本数や保管場所、暗証番号、警報装置の設定は、会社が認めたサービスでも貼りません。隊員の氏名は隊員番号に、施設名・住所・依頼者名は「現場A」などの記号に、来訪者の会社名や氏名は「業者」に置き換えます。依頼者との契約で外部に出せない巡回経路や時刻、棟・階・出入口、警備計画が残る行はAIに貼らず、人が清書します。
隊員番号に置き換えても、社内の名簿と照らせば誰か分かるため、個人情報に当たる場合があります(個人情報保護委員会 Q&A)。番号にしたから個人のアカウントや無料のAIに貼ってよい、とはならないので、使うサービスの条件を先に満たしておきます。
施設警備の報告書を作る指示文
以下は、上のようなメモを報告書の下書きにする指示文の設計例です。【】の中を自社の報告書の項目に置き換えて使います。
あなたは警備会社の報告書作成の補助です。
次の【隊員のメモ】を、【報告書の項目】に沿った施設警備の報告書の下書きにしてください。
守ること:
1. メモに書かれていることだけを使う。書かれていない時刻・場所・人数・原因・対応は推測で埋めず「記載なし」とする。
2. 「?」が付いた内容や言い切れない書き方は、断定せず「要確認」とする。
3. 夜勤で0時を過ぎた時刻は、勤務を始めた日の翌日の時刻として、日付を添えて書く。
4. 異常があった項目は、時刻・場所・見たこと・取った対応の順に書く。対応が書かれていなければ「対応の記載なし」とする。
5. 事故、けが、侵入、火災、設備の不具合に当たりそうな内容は、冒頭の「至急確認」にも書き出す。原因や対応は書き足さない。
6. 巡回で異常がなかった回は「異常なし」と明記する。
7. 依頼者に出す文書なので、事実だけを短く書き、感想や評価は書かない。
8. 鍵の本数や保管場所、警備の手薄な時間帯など、メモにあっても依頼者向けの文書に不要な情報は書かない。
9. 最後に「管制担当が確認すること」を箇条書きで出し、理由を1行ずつ添える。
【報告書の項目】
勤務者と勤務時間/巡回(時刻・経路・結果)/来訪者・入退館/鍵の受け渡し/報告事項・処理状況/引継ぎ事項
【隊員のメモ】
(氏名・施設名・来訪者名を置き換え、鍵や暗証番号の情報を消したメモを貼る)
出力の見本と、
管制担当が直す箇所
上の架空メモで、非常灯の件を管制担当が隊員に確かめ、施設への連絡の要否を判断した後に清書する場合の見本です。AIの実行結果ではなく、指示文が狙う形を示しています。
至急確認
・10/16 22:30 B棟3階で非常灯1か所がつかない(設備の不具合の可能性。対応の記載なし)
勤務者と勤務時間
隊員No.12(夜勤) 10/16 22:00上番 10/17 7:50下番
巡回
・10/16 22:30 巡回1 B棟3階で非常灯1か所がつかない。経路は記載なし
・10/17 2:00 巡回2 異常なし。経路は記載なし
・10/17 5:30 巡回3 駐車場に自転車1台。放置かどうかは要確認
来訪者・入退館
・10/16 23:40 通用口から業者2名が入館(作業許可書あり)
・10/17 0:10 業者が退館(人数は記載なし)
鍵の受け渡し
・10/16 22:00 前勤務者から引継ぎ(本数OK)
・10/17 7:50 引継ぎ(本数OK)
報告事項・処理状況
・B棟3階の非常灯1か所がつかない:対応の記載なし
・駐車場の自転車1台:放置かどうかは要確認
引継ぎ事項
・記載なし
管制担当が確認すること
・非常灯の件を施設の担当者へ伝えたか(メモに連絡の記載がない)
・巡回1〜3の経路(メモに経路の記載がない)
・自転車が放置かどうか(メモに「?」が付いている)
・退館した業者の人数(メモに人数の記載がない)
・非常灯と自転車の件を次の勤務者へ伝えたか(メモに引継ぎの記載がない)
「記載なし」「要確認」の箇所を、管制担当が隊員に確かめる項目として出すよう指示しています。実際の出力では抜けや事実の追加がないか、最初の数週間は隊員のメモと1行ずつ見比べてください。
見比べるときは、出力に出てくる時刻と数字を、メモに同じものがあるか1つずつ指で追います。メモにない時刻や人数が1つでもあれば、その出力は使わずに指示文の1番目を見直します。
依頼者へ送る前に消すのが、冒頭の「至急確認」と末尾の「管制担当が確認すること」の2つの欄です。どちらも社内で確かめるための欄なので、依頼者向けの報告書には残しません。
事故や異常があった日も、
AIに清書させてよい?
事実の確認と連絡が終わるまでは、清書に使いません。事故・けが・侵入・火災などがあった日は、隊長や管制担当が隊員から直接話を聞き、依頼者・警察・消防への連絡を人が判断します。
AIを使うのは、確認が終わった事実を時系列に並べ直す段階からです。指示文の5番目で出させる「至急確認」は、管制担当がメモを最初に読んだときの確認から漏れた行がないかを見る、二度目の確認に使います。至急確認に出た行が、すでに人が確かめて連絡まで済ませた事柄かどうかを照らしてください。
依頼者への報告書を確定するのは、内容を確かめた責任者の仕事です。AIが作った文章をそのまま送らないよう、誰が読んで確定するかを最初に決めておきます。

報告書と配置表と請求書を
突き合わせる手順
ここでは、交通誘導の報告書を表に起こして配置表と比べ、請求書に入れる前に食い違いを洗い出します。
手書きの報告書を、
写真から表に起こす指示文
報告書を写真やスキャン画像から表に起こす場合は、画像を読み取れる生成AIやAI-OCRを使います。ただし、用紙には隊員や来訪者の氏名、依頼者の署名や印、現場名のほか、警備上外に出せない情報が別の欄や余白に書かれていることもあります。送信前に次の4つをすべて満たせない場合は画像を送らず、人が必要な項目だけを表に書き写してください。
- 会社が契約した業務用のサービスだけを使う:入力画像が学習に使われないことを契約や設定で確かめ、個人情報の利用目的と依頼者との契約で外部サービスへの入力が認められる範囲も確認します。個人のアカウントや無料版は使いません。
- 撮る前に用紙の全欄を確かめる:氏名・隊員番号・署名・印・住所・電話番号・現場名と、照合に使わない特記事項は、表裏や余白も見て、写る部分を覆います。現場名は「現場A」などの記号を書いた付箋で隠し、配置表でも同じ記号を使います。依頼者の確認欄は人が原本を見て記録し、画像では隠します。撮影後の画像を拡大して、隠し漏れがないか確かめます。
- 隠せない情報がある用紙は撮らない:事故・苦情の当事者、鍵・暗証番号・警報装置、巡回経路や時刻、警備計画など、会社や依頼者が外部への入力を認めない情報が残る用紙は送信しません。必要な日付・時刻・人数などだけを人が表に書き写します。
- 送る画像の付随情報を確かめる:写真には撮影位置のほか、撮影日時・端末・キャプションなども付いて送られる場合があります(Appleの説明)。iPhoneの写真アプリで「位置情報なし」にする操作は位置情報だけの対策です。会社が認めた方法で送信用ファイルの付随情報を確認し、外部に出せない情報を削除したうえで、送るファイルをもう一度確かめます。確認や削除ができなければ画像を送らず、人が必要な項目だけを転記してください。
読み取らせる段階では、手書きの数字は読み違いが起きるので、読めない字を推測させないことが一番の条件です。
あなたは警備会社の事務の補助です。
添付した警備報告書の画像を読み、【表の列】に合わせて1枚を1行にした表を作ってください。
守ること:
1. 画像に書かれていることだけを使う。読めない文字や数字は推測せず「判読不可」とする。
2. 時刻は24時間表記(例 17:30)にそろえる。「5時半」のように午前か午後か分からない書き方は、元の文言を残して「要確認」とする。
3. 夜勤で0時をまたぐ勤務は、上番した日の日付で1行にする。
4. 勤務区分(日勤・夜勤)や班が書かれていなければ「記載なし」とする。
5. 隊員の氏名・番号と特記事項は読み取らず、表にも含めない。
6. 依頼者の確認欄は画像から判断せず、全行を「原本確認待ち」とする。原本を見た人が後で「確認あり」「確認なし」を記入する。
7. 表の後に、「判読不可」「要確認」「記載なし」「原本確認待ち」を含む行を一覧にする。
【表の列】
日付(上番した日)|現場名|勤務区分|班|開始|終了|休憩|残業|人数|検定合格警備員|確認欄
読み取った表は、最初の1か月は元の用紙と全行を見比べます。依頼者の確認欄は原本で確かめ、表の「原本確認待ち」を人が「確認あり」「確認なし」に直してから照合します。用紙の書き方を「時刻は24時間表記で書く」「日勤・夜勤と班を書く欄を設ける」とそろえると、読み違いを見つけやすくなります。
配置表と比べるとき、
どんな食い違いが出る?
配置表と比べて出る食い違いは、人数、時刻、検定合格警備員、報告書そのものの有無です。確認欄の空きや残業の記載は、配置表とは比べられないので、報告書だけを見て拾います。次の表は、見つかることから考えられる原因と、人が取る対応を並べたものです。
| 見つかること | 考えられる原因 | 人が取る対応 |
| 報告書の人数が配置表より少ない | 当日の欠員、途中で別の現場へ移った | 上下番の記録と照らして、請求する人数を決める |
| 終了時刻が配置表より遅い | 依頼者の指示による延長 | 確認欄と、契約の残業の扱いを確かめる |
| 検定合格警備員の人数が配置表と違う | 書き漏れ、当日の入れ替え | 配置の基準がかかる現場なら、その日の配置を上下番の記録と隊員名簿で確かめる |
| 配置表にない勤務の報告書がある | 追加の依頼、日付や勤務区分の書き間違い | 受注の記録と依頼者に確かめる |
| 配置表にある勤務の報告書がない | 雨天などの中止、回収漏れ | 上下番の報告と、契約の中止時の扱いを見る |
| 報告書の確認欄が空いている(報告書だけで分かる) | 確認をもらい忘れた | 依頼者に実績を確かめてから請求に入れる |
どの食い違いを請求でどう扱うかは、契約と依頼者との取り決めで決まります。AIに任せるのは食い違いを並べるところまでです。
配置表と報告書の
表を比べる指示文
配置表からは、Excelで照合に必要な列だけを選び、隊員の氏名や番号は外します。現場名は、報告書の写真で付箋に書いたのと同じ記号に置き換えてください。報告書側も下の指定列だけを貼り、特記事項や個人情報・警備情報は渡しません。比べる前に、1つの勤務を1行で見分けられるよう、日付(上番した日)・現場名・勤務区分・班の4つを両方の表にそろえておきます。同じ日・同じ現場に日勤と夜勤や複数の班があると、日付と現場名だけでは行を1対1で結べないためです。
報告書の表で勤務区分や班が「記載なし」になった行は、元の用紙と配置表を見て人が埋めてから比べます。班を分けない現場は、両方の表で「1班」とそろえます。
あなたは警備会社の請求前の確認を補助します。
【配置表】と【報告書の表】を、日付(上番した日)・現場名・勤務区分・班の4つがすべて同じ行どうしで結び付けて比べてください。
守ること:
1. 両方の表で比べるのは、人数、開始・終了の時刻、検定合格警備員の3つ。
2. 残業と確認欄は配置表にないので比べない。報告書の表で、残業の記載がある行と「確認なし」の行を「報告書だけで確かめる行」として別に出す。
3. 4つの値が同じ行が、どちらかの表に2行以上あるときは、その4つの値を持つ行を両方の表とも結び付けない。その行は、もう片方の表で1行だけでも、表ごとに「キーが重なり結び付けなかった行」に出す。
4. 最初に、配置表と報告書の表それぞれの行数と、次の行数を答える:全項目一致した行、食い違いがあった行、配置表だけの行、報告書だけの行、キーが重なり結び付けなかった行(表ごと)。1行に食い違いが複数あっても1行と数える。
5. 食い違いがあった行だけを「日付|現場名|勤務区分|班|項目|配置表|報告書」の表で出す。全項目一致した行は一覧にしない。
6. 配置表だけの行と報告書だけの行は、それぞれ別の表に分ける。
7. 食い違いの理由、請求する人数、金額は推測しない。理由の欄は作らない。
【配置表】
(日付・現場名・勤務区分・班・人数・開始・終了・検定合格警備員の列を貼る)
【報告書の表】
(写真から起こし、人が原本の確認欄を埋めた表から、日付・現場名・勤務区分・班・開始・終了・残業・人数・検定合格警備員・確認欄だけを貼る)
次の見本は、架空の1週間分の配置表と報告書で期待する出力の形を示したものです。
行数
配置表 45行/報告書の表 45行
全項目一致:42行
食い違いあり:2行
配置表だけ:1行
報告書だけ:1行
キーが重なり結び付けなかった行:配置表 0行/報告書 0行
食い違いがあった行
日付|現場名|勤務区分|班|項目|配置表|報告書
10/16|現場A|日勤|1班|終了|17:00|17:30
10/17|現場A|日勤|1班|人数|3名|2名
配置表だけの行
10/19|現場A|日勤|1班|3名
報告書だけの行
10/20|現場C|日勤|1班|2名
報告書だけで確かめる行
10/16|現場A|日勤|1班|残業|17:00〜17:30
10/18|現場B|夜勤|1班|確認欄|確認なし
AIが答えた行数は、Excelで数え直して確かめます。配置表の行数が「全項目一致+食い違いあり+配置表だけ+配置表でキーが重なった行」と同じになるか、報告書の表も「全項目一致+食い違いあり+報告書だけ+報告書でキーが重なった行」と同じになるかを見ます。見本では、どちらも42+2+1+0で45行です。AIは行を読み飛ばすことがあるため、件数の確認はAIの答えに頼りません。
報告書が多い場合は、まず数行を使ってExcelの関数で一致・不一致の印を付け、元の表と照らして正しく分かれるか確かめます。その結果を見てから対象を広げ、食い違いが疑われる行だけをAIに渡す方法を検討してください。請求書と明細を突き合わせる考え方は、請求書照合のAI活用でも説明しています。
請求書に入れる前に、
人が決めること
食い違いの一覧が出たら、管制担当と請求担当が次の3つを決めます。
- 請求する区分:日勤・夜勤や検定合格警備員の有無で単価が分かれる契約なら、どの区分で請求するか。
- 残業と中止の扱い:請求で残業を何分単位で数えるか、雨天で中止した日に請求するかどうか。どちらも契約で決まります。この分単位は請求の数え方で、給与の計算で勤務時間を同じ単位で切り捨ててよいという意味ではありません。
- 給与への反映:移動や待機の時間が労働時間に該当するかは、会社が自由に決められるものではありません。使用者の指揮命令下に置かれていたかどうかで、労働基準法の考え方に沿って決まります(厚生労働省のガイドライン)。判断に迷う時間は社会保険労務士に確かめ、給与は確かめた労働時間の記録をもとに計算します。
隊員ごとの勤務時間の集計や打刻漏れの確認も、勤怠管理のAI活用と同じ考え方で進められるでしょう。

隊員と依頼者の情報は、
どこまでAIに入れてよいか
隊員の氏名、施設の名前、鍵や巡回の詳しい情報は、汎用の生成AIには入れないのが基本です。報告書にはこうした情報が並ぶため、依頼者との契約で外部へ出せる範囲を確かめてから、AIに入れる情報を会社で決めます。
個人情報保護委員会は、事業者が個人情報を含む指示文を生成AIに入力する場合は利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています。本人の同意なく個人データを入力する場合は、提供事業者がそのデータを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう注意を呼びかけています(生成AIサービスの利用に関する注意喚起等、令和5年6月2日)。
警備では、個人情報でなくても外に出せない情報があります。鍵の本数や保管場所、巡回の経路と時刻、警備の計画は、知られると警備そのものが弱くなる情報です。
| 情報 | 生成AIへの入力 | 代わりにすること |
| 隊員の氏名・番号 | 照合用の表には入れない | メモの清書に番号が必要な場合も、会社が契約したサービスだけで扱う。写真では氏名と番号を隠す |
| 施設名・住所・依頼者名 | 文字では入れない | 「現場A」などの記号にする |
| 報告書の写真・スキャン | 会社の契約・学習への不使用・利用目的・依頼者との契約を確かめたサービスだけ | 用紙の全欄を見て不要な情報を撮る前に隠す。送る画像の位置情報・撮影日時・端末・キャプションなどを確認し、外部に出せない付随情報を削除する。確認や削除ができない画像は送らず、人が必要項目を転記する |
| 鍵の本数・保管場所、暗証番号、警報装置の設定 | 会社が認めたサービスでも入れない | 「本数OK」とだけ書く |
| 巡回の経路と時刻、棟・階・出入口 | 依頼者との契約で認められる範囲だけ | 外部入力が認められない行はAIに渡さず、人が清書する |
| 事故・苦情の当事者 | 入れない | 責任者が事実を確かめて自分で書く |
隊員が個人のスマホとアカウントで、実際の現場のメモをAIに入れる使い方は避けます。依頼者との契約で外部入力が認められる範囲を確かめ、会社が使うサービスと扱う情報を決めてから、隊員にはメモを管制担当へ送ってもらう形にします。
Excelや管制システムと、
どこまでつなぐか
最初は指示文を貼り付けて下書きする段階から始め、仕組みでつなぐのは毎日の転記が残る場合だけで十分です。いきなり全部を作り直す必要はありません。
| 段階 | やり方 | 人に残る作業 | 向いている会社 |
| 1 貼り付けて下書き | 会社が契約し、入力が学習に使われないと確かめたサービスに、依頼者との契約上も入力できるメモだけを渡す。写真は全欄を確認して不要な情報を隠し、送るファイルの位置情報・撮影日時・端末・キャプションなどから外部に出せない情報を削除して確かめる。確認できなければ写真は送らない | 貼り付け、確認、Excelへの転記 | まず効果を測りたい |
| 2 Excelの様式を固定 | 報告書の表と配置表の列をそろえ、まず数行で関数による一致・不一致の判定を元表と照らす | 食い違いの判断、AIへの受け渡し | 月末の照合に時間がかかる |
| 3 仕組みでつなぐ | 既製の警備管制システムや専用の仕組みで、報告から請求までを1つの記録にする | 例外の判断と確定 | 現場が多く、毎日の転記が残る |
警備管制システムには、上下番の報告、報告書の電子化、請求書の作成までを扱う製品があり、紙の報告書をAIで読み取って請求や給与の集計に使える形で出す警備業向けのサービスも出ています。専用の仕組みを作る前に、今使っている管制システムや警備業向けの製品で足りるかを先に確かめます。
そうした製品を確かめても、依頼者ごとに形の違う報告書の清書や、自社の配置表との突き合わせなどの作業が残るなら、つなぐ対象はその部分だけです。
仕組みにする前に決める3つのこと
請求と給与で、どの記録をもとにするか
配置表は予定で、請求は依頼者が確認した実績、給与は確かめた労働時間の記録をもとにします。用途ごとに、どの記録同士を比べ、誰が確定するかを決めておきます。AIの出力は下書きにとどめ、元の記録を直接書き換えさせません。
誰が、どの順番で確定するか
報告書は現場の責任者、請求は請求担当というように、確定する人と順番を決めます。誰がいつ確定したかは、後から分かる形で残してください。
食い違いが出たら、どこで直すか
隊員に確かめる、依頼者に確かめる、配置表を直す、のどれで解決するかを、食い違いの種類ごとに決めます。上の食い違いの表は、そのまま社内の手順の土台になるはずです。

最初の1か月で試す順番
始める範囲は、1か月で効果を数字で確かめられる大きさにとどめます。
1週目は、今の作業時間を測る週です。報告書の回収から請求書の作成まで、誰が何時間かけているかを作業ごとに書き出します。書き出し方はAI化する業務の選び方で紹介している業務棚卸し表が参考になるでしょう。
2〜3週目は、施設警備の現場1つ、または交通誘導の依頼者1社に絞って、清書か照合の指示文を試します。AIの出力を人が直した箇所は、そのたびに記録してください。
4週目に、1週目と同じ作業の時間と、直した箇所の数を比べます。時間が減っても直す箇所が多いままなら、メモの書き方か指示文を見直します。
まとめ
警備会社のAI活用は、カメラやロボットの導入だけではありません。紙の警備報告書を清書し、表に起こし、配置表と突き合わせる事務は、今の紙とExcelのまま試せます。
線を引くのは、事故・異常の判断、依頼者への報告の確定、請求する人数と金額の3つです。ここは人が持ち、AIには「記載なし」「要確認」「食い違い」を出させて、確かめる箇所を見つけやすくします。
まずは報告書の項目を契約の書面の報告の欄と見比べ、隊員のメモ1日分で清書の指示文を試してください。報告書から配置表・請求・給与まで毎日の転記が残っているなら、仕組みでつなぐ段階を考える時期です。事務のAI活用の進め方は、まるっとAIの事務のAI活用でも紹介しています。